的皪待ち

がっくりしながら家に帰った。

演奏フォームに変な癖がついてしまっていたので、直されたのだ。

でも、構えが変わってしまうのでとても演奏しにくく、音が出ない。

今更、こんな年月がたってからの大きな変更をしなければならないなんて。

今更だな・・・もっと前に修正してほしかった。と思う。

そしてがっかりしている。少しでもうまくなれるように、と毎日練習して音が出るように調整してきたのに、全部ひっくり返ってしまって。演奏中まったく音がでない。困った以上に、落ち込んでしまった。

落ち込むと、最近体調もなんだか悪かったので、帰り道には頭がいたいような気がしてきた。

いつもは電車はなるべく座るようにしているのだけれど、その日は早く帰りたくて来ていた電車に飛び乗ると、立って揺れいたら気持ちが悪くなってしまった。私は揺れに弱い。車に乗っていてもだめな日はだめなのだ。

気持ちが悪いので、ひたすら目をつぶって耐えながら帰宅。

そんながっかり気分で帰宅して玄関に入ると、荷物が来ていた。

あ、梅。

注文していた梅の鉢植えが来ていたのだ。嬉しい。嬉しくて急いでその場で鉢植えの梅を救出するべく梱包を解く。ぐるぐる巻に固定された小さい鉢が出てきた。湿らせた新聞紙で包まれている。まだ乾燥していないみたいで良かった。

水をあげて外に出した。梅はまだつぼみ。梅が来たことで気分は軽くなっていた。梅の花の色はわからないけれど、どんな花が咲くだろうか。

「的皪たる」と白い梅を表現したのっていったい誰だったか思い出せない。でも、白い梅に「的皪」って音も言葉もぴったりだと思う。私の梅は白梅かどうかわからないけれど。きっとぴかぴかの新品の清らかな花が咲くと思う。私の的皪。きっともうすぐ咲くはずだ。