遊びの美

根津美術館 遊びの美 展へ行きました。

また初日にはせ参じちゃいそうになりましたが、その日は用事があったので、断念。次の週に行きました(はせ参じ気味)。

とはいえ、その日もあまり時間がなくて(父によりその日は早く帰ってこいとの厳命)、一時間ぐらいしか見られなかったのですが、とりあえず、一番見たかった屏風や絵巻を中心に見ました。(ということで都合いつものお茶室展示はさーっとしか見られなかった)

一番初めは「子供の姿」ということで、絵巻二巻。西行物語絵巻と北野天満宮縁起絵巻。子供?と思うけれど、西行物語では西行が部屋にいるシーンの表では子供が毬を木の棒についた紐の先についた木の小さい棒で打つというゲームに興じていて、そこを取り上げて「遊び」の絵としていました。意外と難しそうな遊びだな。と見ていて思います。だって棒の先に紐がついていてその先についている短めの棒ってコントロールがむずかしいじゃないですか。それを毬に当てるのかあ・・・。しかも絵に描かれている毬、小さいんです。ほんとのところ毬はあの大きさだったのでしょうか。普通に棒でたたくより先がぐねぐねしているので難しそう。

北野天満宮縁起絵巻は工事現場のシーン。天満宮をどんどん作っているシーンで、中心となるのは木の板に現れた虫食いが和歌になっていて「これは!」となっているシーンなのだろうけれど、その横でたくましい大工たちがわいわいと仕事をしていて、そのまわりに子供がわーっと走ってきていたり、なんだか小競り合いになっていたりして、元気いっぱいに混じっているシーンがあって、そこが「子供の姿」としてとりあげられていました。結構乱暴な扱いを受けている人もいるみたいなのだけれど、最後とをしている人々の顔は元気いっぱいで、生き生きとしていて楽しそう。熱心に仕事をしている人、ちょっと一休みとねころがっている人やおしゃべりしてそうな人、だまって熱心になにやら作業をしている人と、お話としては中心は「これは!」となっている人なのだけれど、この大工さんたちの姿もたくさん大きく描かれていて、その様子も詳しく生き生きとしている。大工道具も現在あまり見ないものが描かれていて面白い。

雅な遊びとしては歌合せや蹴鞠、婚礼のお道具である貝合わせといったものを中心に。

武芸を磨くとして犬追いが描かれる玉藻前物語絵巻や屏風の犬追物病ぐといったも、ハンティングが描かれる曽我物語図屏風といった、ハンティング系のものが多くあつまったエリアもあり。玉藻前の物語では、もちろん犬追なので「犬にて稽古」のシーンが展示されてました。その横の「毬にて稽古」も面白そう(いえ真剣な稽古なのですが)。

縄の先に毬を括り付け、それをもった人が馬に乗り走る。その毬を狙って弓を打つという練習らしい。確かに毬がぴょこぴょこ動きそうだし、練習になりそう。

最後のコーナーは市井の楽しみということで一番現在の人でも親しみを感じる遊びのシーン。お祭りの日を描く洛中洛外図屏風、なかでも一番「ああ、きっと楽しかっただろうなあ」と思ったのは伊勢参宮図屏風。人々が伊勢へお参りする道がずーっと右から左へ続いている。そして道々には小屋のようなものが立てられていて、人々がその中で音楽を奏でたり、休んだりしている。そんな建物がずらーっと並ぶ中を伊勢神宮へお参りに出かける人々。きっと道すがらずーっと音楽が聞こえていて、歌や人々の楽しそうな声が歩く人の周りからずっと聞こえていてその中を歩いていくんだなと思う。その先に目的の神様のいるお宮がある。きっとわくわくして盛り上がっただろうなあと思う。

もちろんごちそうや遊びが周りにはたくさんあって、今の人よりもなんだかわーっと思うようなものがあったのではないかと思いました。

見立那須与一図は馬上の人が船上の扇をまとにして弓を射る図が描かれている。もともとの戦の緊張感はなく、のんびりほんわか、優雅な絵。これも余興といったところで遊びなのだろう。もともと戦の場での余興で、それをまたもう一段風流な余興の図として飾るために美しく描いた図。

全体に見たことがある絵が多かったのだけれど、どれも好きな絵だったのと、もともと屏風絵や絵巻物に描かれているちょっと脇の人たちの様子や遊びに「これ何してるんだろうか」と思うことが多くて、興味があったので、今回の展覧会も大満足。邸内遊楽図屏風なんかも「もー、みんな・・・。」といった遊びの様子で、なんだかかわいい男の子に相手をしてもらっている図なんですが・・・。そういえば毎回あの「腕の上に小さい人を乗っける芸」って、あれ、面白い芸なんだろうか、たぶん、面白いんだろうなあと見つけると毎回思います。

風流踊図衝立も不思議な魅力のある衝立。なんだかちょっと不思議な雰囲気なんですよね。人々がこう、熱くなっていっているところを描いているからでしょうか。単に楽しそうだとか、美しいとか楽しいといったのともちょっと違う風味があるような。興奮の味付けがほかの物よりちょっと濃いような。

いつもの茶室展示は除夜の釜。

歳末のお茶ってこんな雰囲気なのかあと思う。そんなに重くなく、ちょっとしたほっと明るく暖かくなるようなものも交えつつ、軽みのある道具合わせのような気がする。寒い時期、忙しい時期なのでさらっとしたところと冬の枯れた軽さといったものを出すものなのだろうか。知らないので「へーこんな雰囲気なのかあ」と思いました。