お手伝いさん列伝

台所太平記を読む。

昔の話なので、お手伝いさんは「女中」なのだけれど、とにかく強烈な個性をはなつお手伝いさんたちを活写した、エッセイ。読んでいて、なんとなーく母の実家をうっすら思い浮かべる。母はよく「人を使うのは大変。女中さんなんかは親代わりになってお嫁に出したり大変だ。」と言っていた。

谷崎潤一郎の家が豪快にお手伝いさんを雇い入れて、戦時中もあれこれおいしいものを食べようとしていたりして、流行作家はなかなかいい生活をしていて、余裕だなと思いつつ読む。

夫人の実家のならわして、お手伝いさんに「お手伝い名」を付けて呼ぶ、というのは面白いなと思う。丁稚に丁稚名みたいなのを付けるのと似ている。「なんとかどん」みたいな。本名よりそっちの方が呼びやすい、呼びつけにするからというのはなんとなくわかる。

谷崎家で働いているお手伝いさんたちは結構のびのびやっていて、そこが読んでいて楽しいところかな。昔の話なので「嫁ぐまでが一区切り」となっているのと、容姿で結構扱いがちがったりして(といっても、顔かたちだけではなく、なんとなく魅力があるかどうかとうところも加味されているが)、そこはあれだけれど、とにかく作家が「女性好き、女性にものすごーく興味がある」のがうかがわれて面白いし、お手伝いさんたちが大暴れでなんだか痛快でもある。そういう大暴れを生活のスパイスとして喜んでいる節が谷崎家にはある。

どんな大暴れかは読めばわかるけれど、なかなか勤め先としてはいい勤め先だったのだろうな、と思う。思った以上にみんな大暴れで面白い本でした。多少、話が前後してごちゃごちゃするところはあるけれど、文章はさすがの読みやすさ。