五月の半ばの金曜日。
とうとう前期が終わって後期になってしまったサントリー美術館の北斎展を見に行く。北斎は人気なので、どの展覧会も満員のことが多い。平日の午後に行ったところ、まあまあだったけれど、私はあまり人が近くにいると絵に集中できない方なので、私個人としては「混んでいる」感覚。みんなでじーっと並んでみるという方式は私のような気が散りやすく、じっとしていられない人間には向いていない。混んでいない方ではあろうと思うけれど、自由に自分のペースで見られないのはかなり苦痛。
絵と絵の間に並んで待つぐらいの行列になってしまうとうまく見ることができなくなってしまう。
北斎展は結構あちこちであるけれど、サントリーのものはとても見ごたえがある内容だと思う。時々本ばっかり出ていたり、作品数は多くてそういう意味では意味がある展覧会だろうけれど・・・というのがあったりする。サントリーのものはバランスがいい。
とはいえじーっと人が群がっているところで見ることができないので、もう見られるもの、そして私は版画よりも絵画、肉筆画に興味があるのでそちらを中心に見ることにした。どちらかといえば人物より花鳥画のほうが好きなのでそちらは版画もいつくか気になったものを見る。
北斎の冨嶽三十六景などは庶民の暮らしや空気感、天気などが感じられる面白いもので、細かいところまで見る人が楽しめるように作ってある。ビデオ映像がない時代の人たちに会えるような気がする面白いシリーズだと思う。画面構成も面白く、見る人を楽しませたいという気持ちが伝わってくるようなものだ。面白いのだが、人気のため、空いているところちらっと見る程度となる。体質のようなものだから仕方がない。
そういう面白さといったところは美しい花鳥画の版画にも表れていて、鳥たちと花や木は面白いような組み合わせと画面構成になっている。
でも、やっぱり私は肉筆画のほうが好きで、今回は水に鴨といった絵や鋭い鵜の絵がよかった。意外と美しい若衆の絵なんかもいいなと思った。美人画みたいだったけれど。