この器

予防接種できっと熱が出るだろうと思って、休みをとった。

折角の休みだけれど、時間が在るだけで家でじっとしていなければいけないので、眺めて楽しめる本を読んでいる。

最近読んでいた「和歌をひらく」の「和歌の図像学」にちなんで昭和53年発行の「この器こ乃菓子」を読む。古本で購入したもの。このあたりの発行の本は知らない言葉が結構出てくるので、調べながらになることが多いけれど、これは鶴屋八幡発行の鶴屋八幡のお菓子と器の取り合わせをそれぞれ著名人が紹介するという気軽な本なので、具合が悪くても眺めて楽しいと思って読んでいる。

子供の頃、菓銘を聞いてよくわからないことがよくあって、たくさんのお菓子と菓銘を記録してそれぞれ説明を読んで書くというのを数年繰り返していたことがあり、それをしたことからか、親しみができたのか、今はそれほど菓銘がわからないという気持ちが無くなった。お菓子は見ためプラス銘で完成するものだけれど、それが面白くて今もお菓子を見ると銘を教えてもらうのが楽しみで仕方がない。

和歌や文学と菓銘は深いつながりがあるもので、和歌や物語の言葉を借りて、色合いや風景をぱっとプラスすることができて面白いものだと思う。よく考えるなあと毎回驚かされるのも楽しい。

とにかく、そういうこともあってお菓子の姿と銘がすきなのだけれど、この本は銘と姿(写真付き)とそれに著名な人たちが手持ちの器をあわせるという写真集で、こういう合わせ方をするものなのかと、それも面白く眺めることができる。お菓子は1つずつではなくて盛っているものばかりだ。

写真も今ならもっと豪華に撮るだろうなというものが昭和の本だからとてもシンプルで今見ると地味といわれるような写真にとれていて、それもかえって堅実な感じがして懐かしい気がする。

鶴屋八幡は半蔵門の液の近くにお店があって、たまに行ってお菓子を食べることがある。お昼をすぎるとお菓子がなくなってしまうものが出てきて、なかなか食べられないけれど、そとをぼんやり眺めながらお菓子やお茶を楽しんでいるのはたまの楽しみ。