どこを見ておるのだ

最近、古本で「瀟湘八景図」の特集をしている雑誌を見かけて買いました。ずーっと瀟湘八景ってよく出てくるけど、わからないなあと思ってました。それでもずーっとなんだかんだと出会うものを見ていると、いいなと思う瞬間がやってくるもので、数年前、瀟湘八景ばっかりいっぱい出てくる展覧会を見ていて、その時「いいな!好きなものもある!」と思ったことがありました。そんな瀟湘八景の特集。好きだな、と思う絵も出てきたけれど、やっぱり謎だな。と思う瀟湘八景って何。と思っていたので、ぴったりの特集です。みんな大好き瀟湘八景。中国の文人も好きなら、私たちも好きさ!と昔の日本人も「いいよね!」と描いたり手に入れて飾ったり鑑賞したりした風景。

私はいつも喜んで美術館で美術品を見ている方なのですが、鑑賞が深くはないな、と思っています。毎回「素敵ー」だとか「見ると気持ちいい。ものすごく好きだ。」と思うのが主です。それに付随して、「これはどのぐらいの古さの物だな」「この時代って、こんな雰囲気が共通してあるな」「この時代の人物の人体表現って現代と違うな」とか「だんだん現代に人体の表現が近くなってきて近代を感じるな」などと思ったり、感じたりはしているのですが、ぼんやりそういうことを思うだけで、絵や工芸品の鑑賞をしているかといえば、怪しいものです。美って不思議だな、いったい私はどこを見て美と思っているのだろう。と不思議に思っています。面白いって何だろう。といつも思います。

さて、で、水墨画などは特によくわからず見ているのですが、よくわからないなりに「これは好きだ!」と思ったり「これは見飽きない!もっと見ていたい!」と思ったりしています。美術館で絵や物を見るとき、私はほとんど説明を読みません。というのも、不器用なので説明文を読んでしまうとなんだか見たような気になってしまい、そこに展示されているものをじっくり見ることができなくなってしまうのです。それで、美術館に行くと、まずは展示物を見て「おー」と思ったり、浅い感想を抱いたりしつつも大いに楽しんでいます。で、たまに説明を読んで、水墨画だと、例えば「夜の風景」など書いて合って「ええ!!」と思ったりしています。特に時間帯を考えてみてなかったりして、「えー!夜だったのか!」とか思うことが多いです。水墨画の例えば湖か海かわからない(これも、「おいおい」なのですが・・・)とことに靄のようなものが漂う静かな浦に、船が二艘、こちらに向かっている・・・。なんていうのを見て、面白いなあと思って、ふと説明を見ると「夕方の図」なんて書いてあって「ええーー」とかやってます。

いえ、なにか靄とかあるなーとか静かだなーとか思っては見ていますが、そうか夕方か・・・。ぐらいの感じで、いったい「好き」とかいいつつ、どこを見ておるのだ。と自分でも思います。水墨画でよくあります。時間とかわからない問題。夜だったりすると(月なんか出ているとそうかなとは思いますが)、ほんと「夜だとは思ってなかったよ!」と結構な確率で思ってます。障壁画とか屏風絵なんかもぽっかり明るい絵でも月が出ていて夜だったりするのですが・・・。ほんとに、よく見てないながら、好きってなんなんでしょうね。自分でも不思議です。