繍と織

根津美術館で開催中の「繍と織」、見にいけました。去年12月から気になっていたのですが、時間を空けられなくて一月にチャンス。と出かけました。明日、根津美に行くからね、と家族に宣言したら「私もー」と母が立候補。母といきました。

奈良時代飛鳥時代の織りで表現される布から展示は開始。色はだいぶ褪色していたり、糸が抜けていたり、残欠で残り僅かのみといったものもあるけれど、細やかな模様に、これを昔はどのようにして織ったのかと思う驚きの品ばかりでした。花の表現は今見ても面白く美しいし、8世紀の狩猟文は生き生きとした人と動物の動きが織りで表現されていて、どれも技術の確かさ、高さに驚きます。

能装束と小袖も織りや刺繍、そして染めの技術が素晴らしく、あんなふうに人が手で作れるものかと不思議に思います。

模様表現も面白くて、舞装束にリスと葡萄の模様が染められ得たものがあったのですが、リスの尻尾がふさーーっと広がっていて面白いなともいました。ちょっと模様っぽい表現。花や模様も服としてのバランスで向きや配置がさまざまに工夫されています。今回も音声ガイドを聞きながら見学。豪華な婚礼衣装にはただ驚くばかりでした。でも、一番おもしろかったのは上代布かなあ。すごい技術だと思いました。もちろん、それより後の布たちの染めや気が遠くなるような作業の結果の鹿の子絞りや刺繍かと思うような織りの技術、大胆で新鮮なデザインなど見所が満載でした。そして何より綺麗。綺麗な布っていいですよね。

母を連れていたので、あまり疲れてはいけないので、メインの企画展を見たら、あとは一室ぐらい見て帰ろうということに。

2階の展示では「中国の古事と人物」というテーマで展示がありました。二十四孝のこんなふうな絵は初めて見ました。中国の孝行色々の屏風では、なかなか激し目の孝行一覧が。年老いた親を喜ばせるため子供みたいに振る舞って見せたとか、自分のお乳を飲ませたとか・・・孝行ものなので畑に象が来た、はちょっと楽しかったですが。象、何を手伝ってくれたのかなあ。あと外出先で立派なみかんをもらったので、親に食べさせたいと取っておこうとしたら落としたエピソードが二回出てきました。そいして出てくるたびに「みかんあるかなあ・・・」と絵をじっとみる私と母。

そして最後の展示、林和靖観梅図をじっくり見ていた母が、一休みしようと長椅子に座ったところで「ところで、鶴って季節によってどこかへ行っちゃったりしないのかしら」と聞いてきました。林和靖は北宋時代の人で人里を離れて清らかーに風流に暮らした人なのですが、梅を妻、鶴を自分の子供だとして暮らした人なのですが、童子が従っていて、その童子が来客があると鶴を放って教えていた。という言い伝えのある人なのです。観梅図には林和靖が梅を見ている様子が描かれているのですが、右端に童子が描かれています。その童子を見ていてその「鶴を放って教えた」部分と「鶴が子供」部分について考えていたらしく、「鶴をどうやって同じ場所にずっといさせられたのか」が疑問だったようです。鶴って北から冬になると日本に渡ってくるので、渡り鳥の印象があるからだと思います。うーん。林和靖の人柄???母は初め「はねが切ってあったとか」と怖いことを言うので、「うーん。でもそれだと来客の時放って知らせるって言うのができないのでは?」。うーん。二人で長椅子に座って考えたのですが、いい方法を思いついません。母が再び「足に紐がついているとか?」と怖いことを言うので、ちょっとそれはあんまりなので「やっぱり林和靖が立派だから魅力で?」と答えておきました。母は納得いかないみたいで、「鶴がずっといたくなるような魅力的な食べ物と家(?)があるとか」と言ってました。冬寒くないとか?そう言うことかなあ。渡らない鶴の種類が中国にいるとか??疑問を抱きつつ、母の体力がなくなりつつあったので、茶室展示は残念だけれど見ずに帰りました。

全体に綺麗なもの、面白いものばかりなので、おすすめの企画展です。まあ、いつだっておすすめなのですが。おすすめじゃない時がないのですが。

音声ガイドも相変わらずシンプルでいいです。