おたの申します

そういえば、年末に久しぶりに漫画を読みました。「銀太郎さんお頼み申す」という漫画。とってもかわいいお話で、読んでいてわくわくするのは、ああ、こういう着物のあれこれ、楽しいってどんどん調べたり集めたい、着たいって思う時期あるなあと思うから。それに、洋服でもなんでも、着物に限らず、いろいろと着飾ったり、身の回りの事、おしゃれの事、夢中になる時の楽しさが、よみがえってくるような気がするからかもしれない。

「銀太郎さんお頼み申す」は着物漫画で、設定は元京都の芸妓さんの銀太郎さんが現在は新宿界隈で器のセレクトショップというかそういうのを営んていて(ありそう・・・)、そこのお手伝いを着物をまったく知らない女の子がしつつ、着物を覚えていくというもの。元芸妓さんの銀太郎さんが何かを頼むとき「お頼み申す」というので、そこから主人公の女の子が「私も銀太郎さんに諸々ご指導お頼み申す!」と思うところから題名が来ているようです。

そういえば、京都の芸妓さんとか舞妓さんとか「おたのもうしますー」っていうな。と思います。いいますよね。あれ便利な言葉だなあと思います。いろいろお頼みしなきゃいけない商売で、もう決まったフレーズを作っておけば、応用がきくからということなのだろうなあと思います。

初心者向けに着物の種類や季節の事などをさらっとおおまかに紹介する着物紹介漫画というたぐいの物だろうと思います。物語はまだ続いているようで、私が読んだのは単行本の1巻。着物の紹介だけだと単調になってしまうところを、銀太郎さんの過去と銀太郎さんの周りにいる人々を絡ませて、話を進めていくのでとても上手だなと思います。脇のお話がなんとなく「はあ、ありそう。」という話をにおわせる程度なのがいいのかなと思います。

主人公の女の子が元気いっぱいで、一生懸命で、思ったことはさっと口に出す人で、こういう人はかわいがられるのだろうなと思います。さらっと読めて、ちょっと面白いなと思う軽い読み口で面白かったので、二巻が出たら読みたいなと思いました。この漫画みたいにどんどん着物を着せてもらえたり、あちこちでもらったりアドバイスしてもらえるような恵まれた境遇なら、それほど困らないだろうなあなんて思いつつ、そこは漫画なので都合よく、着物に困らない星の下生まれたということでどんどこ進んでいます。かわいいお話です。ほんと主人公は恵まれている。

何もない状態でこんなにいろいろと着せてもらえて、教えてももらえるし(しかもただで!)髪の毛までセットしてもらえて。お手伝いの労働はしていますが、若いころだったらこういの、ほんとに憧れます。いいなあ。そして、主人公の女の子は、女の追分の「あっち側」へ果たして行けるのかどうか。というところが楽しみでもあるのかな。私はそこまでいかなくても、今のままでもいいなと思います。

この1巻が楽しくて、着物、楽しいよねという気分にまた浸りたくて、この話の前日譚が描いてある、美食探偵の本も買ってしまいました。美食探偵はまあいいとして(ごめん)、そこの最後についているのが「女追分」です。上記の「銀太郎さんお頼み申す」で舞台になっているのが新宿追分ビル。この名前を読んだとき、ちょっと笑ってしまいました。新宿追分ビルというなじみのあるビルの名前だったから、読んでみたいと思ったのかも。新宿追分はすこーしだけ小高くなっている三丁目あたりのこと。あの街道が交わる部分が新宿追分。新宿追分ビルは京王の持ち物です。たしか。京王の駅はむかーしむかしはこのあたりにあったと聞いたことがあります。でも、ちょっと坂道になっているので、昔、列車のパワーが足りない時期があって、そこからぐーっと下がって今の新宿の位置になっている。と聞いたことがあるのですが、聞いただけなのではっきりとしたことはわかりません。

とにかく、あの新宿追分ビルがこんなワンダーな場所だったら面白いだろうなあと思います。

で、その追分ビルの一階で営業しているコーヒーショップで主人公はアルバイトをしています。そこへ着物姿の麗しい銀太郎さんがやってくると、あまり飾りっ気のないアルバイトの主人公が銀太郎さんの女っぷりにほれ込んで・・・というお話。この前日譚の中で「追分」という言葉も知らなかった主人公が「自分はいろいろ知らないから知りたい」という健全な意欲ですぐにどんどん調べていきます。追分も街道が分かれるところだと知って、お客さんの女っぷりのいい最上級の女といった感じの銀太郎さんと、化粧っ気のない素顔のかまわない姿の女性客を比べて、女の追分に今、自分はいるのではないか、と思うところから「女追分」の題名がきているという話。その化粧っ気のない追分のこっち側の女は実は・・・というところが私は結構気に入ってます。そうですよね。

銀太郎さんが麗しいので、この漫画を読んでいると「やっぱりはんなり系の着物好きだなあ」といろいろまた着物熱があがりそうで困った漫画でもあります。麗しの銀太郎さんの姿だけでも、楽しい漫画です。続きが楽しみだなあ。