対話

サントリー美術館で開催中の「よみがえる正倉院宝物」展へ行った。

これは正倉院御物を展示しているのではなく、復元模倣の展示だ。宝物が作成された技術、仕組みについては実際に模倣復元するのが一番。ということでその時の一流の造り手が御物模倣に挑んだ作品の展示だ。どれも凄まじい作業を思わせるものばかりだ。

ものは見れば作れるというわけではなく、また知識が合ったとしても、実際に目の前のものそのものを作ろうとすると、おそらく細かい「手の向き」だとかそういったところからして、こうだったのだなと思うような、そんな作業なのだと思う。いったいどうやって作ったらこの最後の形になるのか。そういった技術の研究と技の習得を一流の人が行って、最後まで完成させた作品の数々はお見事としか言いようがない。

もともとの御物が過去の人の凄まじい作品なので、再現作品を見ても、いったい人がこんなに細かい作業を続けて行くことができるのだろうかと思うものばかりだ。

技術だけでなく、材料も謎に包まれているはるか昔のもの。それを一つ一つ、同じものを作ろうとする。人の作ったものをそういった視点で研究するのは、その作った人の手の後を追うような作業だろうと思う。実際作った、見知らぬ、時間も場所も違う人の手を追って作業をするのは、その人のまったく横に、側に寄り添うようなものだろうと思う。

今は見ることができない、保存されていない手の動き、作業の数々を蘇らせる作業が復元なのだろうと思う。

普段の生活では見ない素材も見ることができて、その部分も興味深い。

また、儀式に使われるものも馴染みのないものが多いので、そういったものを儀式に使っていたのだということもまた、過去の人々の心を想像するきっかけになる。

展示の観覧は過去の人、そしてその物になんとか迫りたいと技術を尽くした人たちとの対話となった。

模造作品展示だけれど、とても楽しい展覧会だった。