躑躅

現在4月の最終週。その真ん中。

少し前に友人と皇居の解放されているお庭を散歩した。躑躅がもうたくさん咲いていた。もうそんな季節なのか、と友人ともども驚く。友人はここ数年自由を満喫する生活をしているのでよく散歩をするそうだ。それでも、改めてたくさんの躑躅を見ると、もうそんなに季節が進んだのか、と思うらしい。

自由時間に写真をはじめて、カメラを購入し、いろいろと写真を撮っているという。私はカメラはさっぱりわからないと思っているので、カメラをあっという間に研究し、購入し、使いこなしているのに心底驚いている。もともと頭の良い人なので驚くにはあたらないのだろうけれど。手に職を持っている人なので、自由時間を楽しんだ後、また働き始めてもいいとのこと。手に職というか頭に職である。優秀な人はうらやましい。

うすらぼんやりした頭の持ち主である私は、躑躅を見ると、夢のような現実のような、子供のころに迷ったような、そんな世界をこれほどうまく書けるのかという作品が多い泉鏡花を思い出す。泉鏡花は世話物といったジャンルというか、師匠の尾崎紅葉系の話も多く書いているけれど、私はそちらは読んでも全く興味がわかない。能の囃子関連の家に生まれたからか、能もそうだし、夢の中もそうなのだけれど、いつの間にか自分なのか相手なのか、周りの人も、あの人だと思っているけれど、いつの間にか違う人がまじっているような、そして何より、読んでとても面白いのに、どんな話だと説明するとつまらなくなるという夢とおんなじ特徴を持っている一群の話のほうを好んでいる。