「いまは昔 むかしは今」シリーズの「天の橋地の橋」を読む。気に入っている本で、たまに読む。

この本を知ったのは2011年にあった特別展「日本美術にみる橋ものがたり」で、参考文献のうちの一つとしてあげられていたから。

さっそく買って、すぐに好きになった。守備範囲の広さ、次々に玉手箱のように出てくる言葉が楽しくて、どこから読んでも楽しい本だと思う。この本を知ったきっかけになった上記の特別展は日本橋にある三井記念美術館が行った「日本橋架橋百年記念の特別展。絵画の中に登場する橋をテーマにしたものだった。

橋ばかりをテーマにという展覧会を見たのは初めてだったのだけれど、改めて見てみると、橋とはこっち側と向こう側、二つの世界を結ぶもので、なかなか魅惑的なアイディアなのだ。

展覧会はとても印象的なもので、今でも、時々思い出してはほんのりと幸せな気分になる。なかでも、一番魅了された作品は扇面図で江戸時代の物。狩野常信の月宮殿図扇面。もう古びて絵はだいぶ薄かったけれど、見ていると、なんともいいのだ。清らかで静かで、そしてちょっと楽しいような。

気に入った展覧会だったので、参考文献の一部を見たとき、ぜひ読んでみたいな、このテーマは好きだ。と思って、中でも手に入れることができた、上記の「天の橋地の橋」をさっそく買って、それ以来、折に触れて拾い読みしている。おそらく子供向けの本なのだろうと思うのだけれど、いやいや大人が読んでも読みごたえがある素晴らしい内容なのだ。豊富な写真と図、そして関連する文章がたくさん引用されている。引用されるのは古くは万葉集から。様々な文献から縦横無尽に橋が取り出される。和歌や昔話、実際の橋と話題がぎっしりあり、なかなかの充実感で、しかも、きちんと優しく説明が書かれている。この素敵な本はシリーズ本で、全5巻。他の巻も読んでみたいと思う内容だ。